自己肯定感という言葉を聞くと、「周りから好かれること」「自信を持つこと」を思い浮かべる人も多いかもしれません。
では、SNSで多くの反応をもらったり、大きな目標を達成したりすれば、自己肯定感は安定するのでしょうか。
SNSは、新しい人とつながり、自分でも知らなかった才能や生き方を発見するきっかけになります。
一方で、「見てほしい」「褒めてほしい」「すごいと思われたい」という気持ちだけが目的になると、反応の数によって自分の価値まで上下しやすくなります。
今回は、単純に自己肯定感が高いか低いかではなく、自信につながるまでの構造を見ていきたいと思います。
自己肯定感は自分を信じる土台
自己肯定感を一言で言うと?
自己肯定感をわかりやすく言えば、自分の力や価値を、自分自身で認められる感覚です。心理学では、能力や達成、性格、価値観などを含む、自分全体への評価として説明されます。
自己肯定感は、自分に「価値がある」と言い聞かせるだけで、安定して育つものではありません。自分の行動や経験を通して、自分への信頼を育てていくことも大切です。
そこで重要になるのが、自己効力感や自信との関係です。
自己効力感・自己肯定感・自信・承認欲求の関係
自己効力感
自己効力感とは一つ一つの物事に対して「自分はこれができる」という感覚です。
自分ならこの行動を実行できる
この課題に対処できる
という具体的な「自分ならやれる」という感覚です。
自分で決めたことを実行し、やり遂げた経験などを通して、「このくらいなら自分にもできる」という感覚が育っていきます。
自己肯定感
改めて、自己肯定感とは「自分の力や価値を認められる」ことです。
物事をやり遂げ、「自分ならできる」という自己効力感を得る。そうした経験を重ねることで、「自分にはできることがある」と自分の力を認められるようになる。これが自己肯定感を育てる一つの道筋です。
自信
自信とは、これまでの経験から自分の能力や判断を信頼し、「自分ならやっていける」と思える感覚です。
今回の記事では、自己効力感から自信につながる流れを、次のように考えます。

一つひとつの「できる」が積み重なり、自分の力を経験として知ることが、自己肯定感や自信につながっていきます。
承認欲求
承認欲求とは、「他人にも認めてほしい」という気持ちです。
人から褒められたり、認められたりしてうれしくなるのは、自然なことです。他者からの評価が、自信や自己肯定感を支えることもあります。しかし、
認められなければ、自分には価値がない
となると、自分の価値が他人の反応によって大きく左右されるようになります。
それぞれの違い
整理すると、
- 自己効力感:「自分ならできる」
- 自己肯定感:「自分の力や価値を、自分で認められる」
- 自信:「自分の力を信じられる」
- 承認欲求:「他人にも自分の価値を認めてほしい」
となります。
人から認められたいと思うこと自体は、悪いことではありません。人は他者との関わりの中で、自分の価値や居場所を感じることもあります。
問題になるのは、「承認されなければ、自分には価値がない」となることです。
SNSで自己肯定感を満たそうとする苦しさ
SNSは、自己表現や交流の道具として使えば、人生を広げてくれます。しかし、承認を得ることが出発点にもゴールにもなると、次のような循環に入りやすくなります。

ここでは、自己肯定感が自分の内側から育っているというより、外部から一時的に満たされている状態に近いのかもしれません。他者の評価や成果など、特定の条件によって自分の価値を決めることを「条件付きの自己価値」と呼ぶことがあります。
評価を得られたときには自信を支えてくれますが、得られないときには、自分を否定しやすくなります。賞賛は、あればうれしいものです。しかし、自分の価値を支える土台まで他人へ預けてしまうと、反応がないたびに心が揺れます。
自分で自分を認めることが土台。
他者の賞賛は、その上に加わる喜び。
この順番が大切なのだと思います。
自己肯定感を育てる
まずは自分の力を正しく見積もる
自己肯定感を育てるには、まず今の自分の力を正しく見積もることが大切です。自分の力を必要以上に低く見る必要も、高く見せる必要もありません。
今の自分にできること、少し努力すれば届きそうなことを知り、それに合った目標を立てます。

大きな夢を持つことは悪くありません。
ただ、高すぎる目標だけを追い続け、成功体験が少なく、失敗ばかりが心に残ると、「自分は何もできない」という感覚が強くなります。
小さな目標によって自己効力感を育てることは、大きな目標へ進むために、自分の足元へ一段ずつ階段を作ることでもあります。
できたことを認識するのは思ったより大切
目標を達成しても、
「これくらい誰でもできる」
「まだ全然足りない」
「あの人の方がすごい」
と考えていたら、達成したことを成功体験として受け取りにくくなります。大切なのは、達成したことを自分で認識することです。
今日、運動を10分続けた。
後回しにしていた連絡を一つ終わらせた。
疲れていたけれど、食事を作った。
以前なら言えなかったことを、落ち着いて伝えられた。
他人から見れば小さなことでも、自分にとって必要な一歩なら、それは「できたこと」です。そして、せっかくできたことを、他人との比較によって消してしまわない。
できたことを、できたと自分で受け取る。その積み重ねが、自分への信頼を育てます。
積み重ねた経験は、一度の失敗では消えない
自分に合った目標を達成し、「自分にもできる」と知る。その経験の積み重ねが、自分への信頼を育てます。一度うまくいかなかったとしても、これまで達成してきたことや、身につけてきた力までなくなるわけではありません。
今回はできなかった。
でも、自分にはできることがある。
そう思えるのは、自分の力を経験として知っているからです。ただし、達成することだけを自分の価値にしてしまうと、
「達成できた自分には価値がある」
「達成できなければ価値がない」
と、成果によって自己評価が大きく揺れるようになります。
大切なのは、成長を目指しながらも、今の自分がすでに持っている力や、これまで積み重ねてきた経験を受け取ることです。
これは「足るを知る」という考え方にも少し似ています。足るを知るとは、成長を諦めることではありません。今あるものや、今できていることを認めたうえで、次の一歩へ進むことです。
自分の価値を証明するために生きない
自己肯定感は、誰かに「すごい」と言われ続けることで安定するものではありません。自分の価値を証明するために生きるのではなく、生きて、経験して、積み重ねる。その中で、自分への信頼が育っていきます。
大きな夢がなくてもいい。
誰かより優れていなくてもいい。
今日、自分で決めた小さなことを一つできたなら、それを「できた」と受け取っていい。
その積み重ねが、「自分ならできる」という自己効力感になり、やがて「自分には物事を進めていく力がある」という自己肯定感や自信につながります。
自己肯定感を上げるために何かをするのではなく、自分に合った一歩を選び、その一歩を自分で認める。

それだけでも、今より少し、自分を信じて生きやすくなるのだと思います。

